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2007/08/07

PRA補足

CEAについて書く前に、PRAについて少し補足を。

全盲に至るGPRA(Generalised Progressive Retinal Atrophy)ですが、CERF(The Canine Eye Registration Foundation:US)http://www.vmdb.org/cerf.htmlのアイチェックにおいては、何頭かのボーダーコリーが「発症」あるいは「その疑いがある」とされているようです。

しかし、それらの個体についてコーネル大のDr. Acland氏は、彼が実際に診察、または診ることができなくても、検査データを見ることができたすべてのボーダーコリーについて、真のPRAの特徴をもつ病変を生じた」犬は1頭だったと、述べています。さらに「この犬と同様な病変が同様な年齢に生じた1ー2匹の犬についての報告がある」と。

残りの個体については、「一つの例外を除いて、PRAとは一致しない病変を有していた。」と述べていらっしゃいます。そして、当然ながらこの個体数、データ数では、この病気がボーダーコリーという犬種の中に「遺伝性」として存在するとは証明できないとも述べておられます。

さらに付け加えますと、1991から1995年までのCERFの統計によると、ボーダーコリーでPRAと診断されたすべての症例はオスであり、PRAを疑われた症例も圧倒的にオスが多かったことから、ボーダーコリーのPRAはX伴性か、あるいは性が限定された疾患のいずれかであると示唆されています。ですが、この点もまた確証にはいたっていません。(*:文中のPRAとはGPRAです)
http://www.sheepdog.com/genetics/eyes.html

ただ、これは1995年頃の話ですから、現在は状況が変わっているかもしれません。しかし、USの各ボーダーコリークラブは、現在もDr. Acland氏の論文をよりどころとしているようです。
http://www.americanbordercollie.org/
http://www.bordercolliesociety.com/index.html

私がこのDr. Acland氏の論文を重要に捉えているのは、この論文では一般論としてのPRAやCEAに加えて、それぞれの疾患について、「ボーダーコリーではどうなのか?」が詳細に述べられていることです。

さて、一方CPRA:中心性進行性網膜萎縮(Central Progressive Retinal Atrophy)についてですが、私の手元にあるBVA/KC/ISDS Eye Scheme パンフレットには「Significantly, the incidence of central progressive retinal atrophy in ISDS registered dogs tested under the Eye Scheme has fallen from 14 per cent to less than 0.25 per cent over a period of 20 years」と書かれています。

素晴らしいサクセスストーリーですよね。20年間地道にアイテストを続けることで、14%もの発症があった疾患を0.25%以下にまで減少させたのです。近年のISDS発行のスタッドブックを見ると、さらに発症率は下がっているように思います。

これは、ISDSが繁殖時の両親犬、および生まれた子犬のアイチェックの義務化(例外あり)に加えて、ナショナルトライアル(毎年、今頃行われるイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの各チャンピオンを決めるメジャーなトライアルで、各国とも、ローカルトライアルにてqualifyした、ハンドラーと犬たちが集うbig trial。通常各ナショナルとも150頭ほどのエントリーがある)を走る全ての犬たちに、トライアルに出場する限り、毎年のアイチェックを義務づけてきた結果です。ナショナルを走るような犬たちは、自ずと繁殖の現場でも多用されます。これらの犬たちが毎年検査を受けることの意義はとても大きいのです。

そうですね、日本の現状で分かり易く例えれば、「今後繁殖の現場で多用されそうな、アジリティの2度、3度を走っているようなボーダーたち。ショー、オビディエンスのチャンピオン、各ディスク団体のファイナル出場権を得たボーダーたち、彼らの全てがアイチェックを受けているような状態」とでもいいましょうか。

私は前回の記事で「あまり心配する必要はない」と書きましたが、現在の日本のボーダーコリーの遺伝子プールを思うとき、特にワーキングラインではその遺伝子プールはとても狭く、もし最初に導入されたラインにキャリアが存在していたとしたら、世代が2代、3代と進展した今、楽観できないことかもしれません。 (すでに、他の遺伝性疾患、CEAやCHDでは、この心配が現実のものとなりつつあるようです)

前回の記事でも書きましたが、「オーナーが気づいていないかもしれない」ということが、視力が残ることが多いCPRAの場合には考えられるからです。今の若い犬たちが、8歳、9歳と年を重ねてきた時に、問題が出てくるのかもしれません。与える食事に適切な量のビタミンEが含まれていたとしても、それを機能的に利用できない体質の犬がいるのだとしたら?

ですから、繁殖をする犬以外でも、定期的なアイチェックは意義のあることだと思います。

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コメント

あびちょさん、はじめまして。
解説ありがとうございます。

その昔、最初のボーダーコリー(ISDS)の子犬が来ると決まった時とても喜んだ(子犬が来る事を)のですが、仲介してくれた友達から、「まだ、アイチェックが終わっていないから、100%とは言えないらしい」といわれ、犬種に特有といわれる様々な遺伝病がある事を知りました。(その時が、いわゆる純血種に接する初めてだったので・・・ISDSの犬が純血種かどうかの議論は別として。)

その当事知ったのが、今回のあびちょさんの記事の中にある、20年間に2桁発症率を減らしたPRAに関するISDSの試みでした。私は、この数字の減少に吃驚しました。だから、てっきり、PRA(CとGの違いについては不案内でした)は遺伝病なのだと信じていたのです。そして、こういう登録方法をとる事で、遺伝病は確実に発症を減らせるのだと思っていたのです。

1つの病気についても、その原因や、それのおよぼす結果は、一通りではないものなのですね。

投稿: kuro | 2007/09/06 11:54

>kuroさん
いらっしゃいませm(__)m ウチのペケ君がお世話になってるようで、ありがとうございます。それから、月末のセミナーもよろしくお願い致します。

さて、、、
*1つの病気についても、その原因や、それのおよぼす*結果は、一通りではないものなのですね。

そうなんですよね。私もPRAに関しては今回改めて調べてみて、知識を整理し、また見解を新たにいたしました。ですから、機会を与えてくれた知人には感謝しております。

ISDSの登録犬において、CPRAを発症する犬が激減したのは、ISDSの地道な取り組みに加えて、UKにおける犬たちの栄養管理の変化も影響を与えている可能性があるのですよね。

それでも、食餌事情が変化する前にもクリアな個体はいたわけですから、やはり何らかの遺伝的素因は発症に関与しているように思います。ですから、依然として定期的なアイチェックによるブリーディングストックの管理は必要だと考えます。

投稿: あびちょ | 2007/09/08 13:10

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